はじめに
今、地球の環境について考えることはとても大事です。例えば、工場で作られる物や使うエネルギーが環境にどんな影響を与えるのか、またそれをどうすれば改善できるのか知っていますか?環境にやさしい未来を目指すためには、こうした影響を詳しく調べることが必要です。ライフサイクルアセスメント(LCA)という方法を使えば、これを科学的に分析できます。

ここでは、日本で開発された「LIME」という仕組みと、その進化版である「LIME3」について、より具体的に説明します。この方法を使うことで、地球温暖化や生物多様性の減少といった大きな問題をどのように理解し解決に近づけるかを知ることができます。
LIMEってなに?
LIMEは、日本で作られた環境への影響を調べるための方法です。例えば、物を作るときにどれくらいのエネルギーや資源を使い、それが環境にどんなダメージを与えるかを数字で評価します。
この方法の特徴は、環境に与える影響を「お金」などの具体的な形に換算できる点です。例えば、二酸化炭素の排出による健康被害や生物多様性への影響を金額として示すことで、どの部分の改善が最も効果的かを明確にする手助けをします。
複雑に絡み合う環境問題を比較できる優れた手法です。この方法は科学的に優先順位を定め、私たちの意思決定をサポートします。ぜひこの記事を通じてその仕組みを理解し、皆さんの将来の意思決定に役立ててください。

LCAってなに?
LIMEはLCAにおいて重要な役割を担っています。LCA(ライフサイクルアセスメント)とは、ある物が生まれてから捨てられるまで、地球にどんな影響を与えるかを調べる方法です。

例えば、ペットボトルを作るときに使うエネルギーや材料、捨てた後のゴミの量などを全部調べます。この情報を基に、環境へのダメージを減らす方法を考えるのがLCAの役割です。
LCAを使えば、地球温暖化の原因や生物が住む環境がどう変わるかなどを詳しく知ることができます。それによって、「もっと地球にやさしい作り方はないかな?」と考えることができるのです。このLCAの裏にはLIMEなどの手法によって分析がなされています。
LIMEのあゆみ
LIMEは、日本で開発されたLCAの特別なやり方です。これまでにいくつかのバージョンがあり、どんどん改良されてきました。今では「LIME3」という最新バージョンがあります。

LIME1
最初のバージョンであるLIME1は、日本の環境や人々の考え方を反映した方法でした。例えば、地球温暖化や大気汚染など11のテーマに分けて影響を調べる仕組みが作られました。この仕組みを使って、特に大気汚染が人体に与える影響について詳細な分析が行われました。その結果、都市部での自動車の排気ガスが健康に大きな影響を与えていることが分かり、環境政策の見直しにつながりました。また、エネルギー使用量の削減効果を明確に示すことで、省エネルギー技術の導入促進に貢献しました。
LIME2
次に作られたLIME2では、室内の空気汚れや騒音といった新しいテーマも追加されました。また、評価の精度がさらに高まり、どの地域でどんな環境問題があるかを詳しく調べられるようになりました。
LIME3
LIME3は2018年に発表されました。このバージョンでは、世界中の国々で使えるように改良され、地球全体での環境への影響を調べることが可能になりました。
LIME3の特徴は、影響をお金のような分かりやすい数字で表す点です。例えば、二酸化炭素の排出が健康や生物多様性に与える影響を金額として算出します。具体的には、CO2の排出量に基づき、医療費や失われる生態系サービスの価値を計算します。これにより、異なる環境問題を比べやすくなり、優先的に解決すべき問題がはっきりします。
LIME3を使った例
LIME3は、さまざまな分野で活用されています。その中でも特に注目されている例を紹介します。

セメント工場の影響を調べる
セメントは建物を作るときに使われる重要な材料です。世界中のセメント工場が地球にどんな影響を与えているのかを調べた研究では、国ごとに大気汚染や資源の使い方が大きく異なることが分かりました。
例えば、セメント1トンを生産する際には平均して900kgの二酸化炭素が排出されることが分かっています。この排出量は、石炭などの化石燃料を多く使用する工場ではさらに増加します。フィリピンでは、石炭を主なエネルギー源として使用しており、その結果、工場からの二酸化炭素排出量が高いことが問題視されています。一方、日本では、廃棄物を燃料として再利用する技術が進んでおり、排出量を大幅に削減することに成功しています。このような取り組みにより、年間数百万トンの二酸化炭素排出量を削減している事例も報告されています。
例えば、フィリピンでは石炭の使用が多く、それによる環境への負担が大きいことが明らかになりました。一方、日本では廃棄物を再利用することで影響を抑えていることが評価されました。
ハンドソープの使い方と地球への影響
ハンドソープが地球にどんな影響を与えるかを調べた研究もあります。特に、手洗いの習慣がない国では、手洗いを増やすことで健康への良い影響が大きいことが分かりました。例えば、ある研究によると、手洗いを推進した結果、途上国では下痢による死亡率が約40%減少したというデータがあります。このように、手洗いの普及は感染症を大幅に減少させ、社会全体の健康を向上させる可能性を秘めています。
例えば、途上国で手洗いを促進することで感染症を減らし、社会全体の健康を向上させることができます。環境への負担を考えながら、こうした商品を作ることが重要です。
印刷物の影響を比べる
日本とインドネシアで作られた紙を使った印刷物を比べた研究では、製造場所や材料の違いが環境に与える影響に大きな差を生むことが分かりました。
たとえば、日本で作られた印刷物は水の使用量が多いですが、再生紙の利用率が高いことで全体の影響が抑えられています。一方、インドネシアでは森林資源の利用が環境に大きな負担を与えています。
LIME3のいいところ
LIME3を使うことで、次のようなメリットがあります。

世界全体での影響を知る
LIME3は、国ごとのデータを使って地球全体の環境問題を評価します。例えば、インドでは急速な都市化が進む一方で水資源の枯渇が深刻化しています。この問題は農業や工業生産にも影響を及ぼしています。一方、北欧諸国では森林資源の持続可能な管理が重点課題とされており、二酸化炭素の吸収能力を最大化する取り組みが進められています。このように、LIME3は地域ごとの具体的な問題を明らかにすることで、それぞれに適した解決策を提示する役割を果たしています。
環境の影響をお金で比べられる
環境へのダメージをお金に換算することで、異なる問題を簡単に比べることができます。例えば、大気汚染による医療費の増加が1トンのCO2排出あたり50ドルに相当すると試算され、水資源の枯渇が地域の農業生産への影響で1立方メートルあたり10ドルの損失を引き起こす場合、どちらが優先的に対策を講じるべきかが具体的に見えてきます。
地域ごとの特別な問題に対応
LIME3は、地域によって異なる環境問題を特定し、それに合った解決策を考えるための道具となります。例えば、日本では都市部の大気汚染が課題とされ、自動車の排出ガスを削減する政策が必要とされています。一方、インドでは水資源の枯渇が深刻で、農業用水の効率的な利用が求められています。このように、LIME3は各地域の環境問題を具体的に評価し、それぞれに最適な解決策を示すことが可能です。
分野を問わず使用可能
工場で作られる製品から日常生活で使う日用品まで、幅広い分野で環境影響を調べることができます。例えば、自動車や建設資材のような工業製品だけでなく、食品や衣料品などの日常生活に密接した製品についても、その製造過程や廃棄時の影響を詳細に評価できます。また、サービス業におけるエネルギー消費や廃棄物の排出量についても分析が可能です。
未来のための意思決定を支援
環境に配慮した製品設計や政策決定をサポートします。例えば、ある自治体ではLIME3を活用して、廃棄物処理施設の新設計画を見直しました。その結果、廃棄物のリサイクル率を30%向上させる施策が採用され、地域全体での環境負荷を大幅に削減することに成功しました。また、別の事例では、エネルギー効率の悪い建物の改修プロジェクトにLIME3を適用し、エネルギー消費量を20%削減することができました。このように、LIME3は多様な分野での持続可能な社会づくりを支える有力なツールとなっています。
他の手法について(海外)と比較
LIME3は日本で開発された手法ですが、海外にもさまざまな環境影響評価手法があります。以下に、代表的な海外の手法との違いや特徴を比較します。

ReCiPe
ReCiPeは、オランダを中心に開発された手法で、LCAの中でよく使われる方法の一つです。この手法は、LIME3と同様に環境影響をエンドポイントまで評価できる点で類似しています。しかし、ReCiPeは地域性よりも世界的な平均値に基づいた評価を行うことが多く、特定の地域ごとの問題に対応するには限界があります。一方で、利用できるデータが広範であるため、グローバルなプロジェクトで活用されやすい特徴があります。
EPS(Environmental Priority Strategies)
スウェーデンで開発されたEPSは、環境影響をお金に換算する点でLIME3と似ています。ただし、EPSは主にスウェーデンや欧州諸国での利用を想定して設計されており、LIME3のようにG20諸国全体のデータを反映しているわけではありません。また、EPSは生態系への影響よりも人間の経済活動への影響を重視している点で異なります。
TRACI
アメリカで開発されたTRACI(Tool for the Reduction and Assessment of Chemical and other environmental Impacts)は、アメリカ国内の環境影響評価に特化した手法です。この手法は、エネルギー使用量や大気汚染などの評価に強みがありますが、LIME3のように生物多様性への影響を細かく評価することは難しいとされています。
比較のまとめ
以下にLIME3と他の手法の主な違いを表にまとめます。
手法名 | 主な特徴 | 地域性 | 金銭換算の有無 | エンドポイント評価 |
---|---|---|---|---|
LIME3 | 日本発でグローバルに評価可能 | 高い | あり | 詳細 |
ReCiPe | グローバル平均値に基づく評価 | 中程度 | あり | 詳細 |
EPS | 欧州中心、経済活動重視 | 低い | あり | 中程度 |
TRACI | アメリカ国内特化型 | 低い | なし | 中程度 |
LIME3は、地域ごとの詳細な評価ができる点で特に優れており、日本のみならず国際的なプロジェクトでもその活用が広がっています。これにより、他の手法では得られない地域性に基づいた環境問題解決のための意思決定が可能です。