ネイチャーポジティブとは?生物多様性の持続可能な未来に向けて

Natural Capital-Biodiversity

はじめに

現代社会では、持続可能性の重要性が高まっています。その中で「ネイチャーポジティブ」という新しい考え方が注目を集めています。ネイチャーポジティブは、生物多様性を保全し、回復させることで自然環境を持続可能な状態に戻す取り組みを指します。例えば、森林を保護して動物たちの住む場所を確保したり、湿地を再生して水質を改善するプロジェクトなどが挙げられます。この取り組みは私たちの生活にどのように影響を与えるのか、その意義について詳しく探っていきます。

ネイチャーポジティブとは

ネイチャーポジティブは、生物多様性の損失を2030年までに止め、それを回復させることを目標とする概念です。これは、人間社会と自然が共に生きる「共生社会」を目指すものです。また、経済活動にも自然資本を活用し、環境と経済のバランスを取り戻す取り組みです。再生可能な資源を活用することで、自然環境を守りながら私たちの生活の質を向上させる新しいモデルとして注目されています。

http://CC BY-SA 4.0 出典:www.naturepositive.org

なぜネイチャーポジティブが必要なのか

現在、地球の陸地の75%以上、海洋の66%が人間の活動によって変化しています。このような状況は、多くの動植物の生息地を奪い、絶滅の危機に追いやっています。例えば、森林伐採によって多くの動物が住む場所を失い、海洋汚染が魚類やサンゴ礁に深刻な影響を与えています。さらに、環境の劣化は気候変動を悪化させ、食料や水の供給にも深刻な影響を及ぼしています。ネイチャーポジティブの取り組みは、これらの問題を解決し、自然と人間の双方に利益をもたらすことを目指しています。

日本と世界の動向

国際的な枠組み

2022年に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」が採択されました。この枠組みは、2030年までに自然を回復させる具体的な目標を設定しています。世界各国が協力し、生物多様性を守るための行動を進めています。

日本の取り組み

環境省 30by30 HP

日本では「生物多様性国家戦略2023-2030」が策定され、国内での「30by30目標」の達成を目指しています。この目標は、陸地と海洋の30%以上を保護地域やOECM(その他の効果的な地域ベースの保全措置)として保全するものです。例えば、既存の国立公園や自然保護区の拡大、新たな保全区域の指定、またこれらの地域の管理体制を強化する施策が進められています。さらに、地域社会や企業の協力を得て、持続可能な社会の実現に向けた具体的な行動が進められており、各地域で自然再生プロジェクトや生物多様性に配慮した農業が展開されています。

30by30目標の重要性

30by30目標とは

30by30目標は、2030年までに地球全体の陸地と海洋の30%以上を保全することを目指す取り組みです。この目標は、気候変動への適応や生態系サービスの回復にも寄与します。また、地域の自然資本を活用した経済の発展を促進する重要な役割を果たします。

環境省 30by30概要

日本の進捗状況

現在、日本では陸域の20.5%、海域の13.3%が保護地域に指定されています。しかし、目標達成にはさらなる努力が必要です。特に、OECMとして認定される地域を増やすことで、保全活動を拡大し、生態系のネットワークを構築することが求められています。

環境省 30by30 HP

企業による実例

多くの企業が生物多様性の保全に貢献しています。

企業名取り組み内容詳細効果
イオン株式会社「AEON Hometown Forests Program」を推進森林を増やし、CO₂吸収を促進地域環境の改善
トヨタ自動車株式会社自然共生型工場を開発生物に優しい工場設計を採用地域生態系の保護
花王株式会社環境配慮型製品の開発ゴミ削減と消費者意識向上環境負荷の軽減
サントリーホールディングス株式会社水源涵養活動「天然水の森」を展開森林と水資源を守る持続可能な水循環の確立
ソニー株式会社持続可能な製品設計を推進グリーン技術を活用自然環境と経済の共存

これらの企業の活動は、環境保全と経済発展の両立が可能であることを示しています。例えば、イオン株式会社が展開する「AEON Hometown Forests Program」は地域の森林を回復させ、CO₂吸収を促進しています。また、トヨタ自動車株式会社の自然共生型工場は、生物の生息地を守りながら生産効率を高める取り組みです。さらに、サントリーホールディングス株式会社の「天然水の森」プロジェクトでは、水源地の保全活動を通じて持続可能な水循環を実現しています。企業が主体的に取り組むことで、自然環境を守りながら社会の発展に寄与する具体的なモデルケースが形成されています。

地域社会と個人の役割

ネイチャーポジティブを実現するためには、地域社会や個人の行動も欠かせません。

  • 地域イベントや環境教育プログラムへの参加を通じて、生物多様性への理解を深める
  • 環境に配慮した商品を選ぶことで、自然に優しい消費行動を実践する
  • リサイクルや省エネを心がけ、日常生活での環境負荷を減らす

これらの行動を積み重ねることで、持続可能な未来を共に築くことができます。

結論

ネイチャーポジティブは、私たちの生活と地球の未来をつなぐ重要な取り組みです。日本や世界各地で進められている生物多様性保全の活動は、持続可能な社会の実現に向けた希望をもたらします。私たち一人ひとりが自然と調和する行動を起こすことが可能です。たとえば、地元の清掃活動に参加したり、環境に配慮した製品を選ぶことから始められます。また、企業や自治体が取り組む環境保全プロジェクトに関心を持ち、情報を共有することで、その活動を広める手助けができます。企業、地域社会、個人が協力し合い、自然を守り続けることが求められています。


参考文献

  1. 環境省「生物多様性国家戦略2023-2030」
  2. 環境省「30by30ロードマップ」
  3. 環境省 国連生物多様性条約公式サイト
  4. イオン株式会社 イオン生物多様性方針
  5. トヨタ自動車株式会社 サステナビリティ
  6. 花王株式会社 生物多様性の基本方針
  7. サントリーホールディングス株式会社 天然水の森
  8. ソニー株式会社 環境